議事録、いつ書いているか
施主との打合せ、下請業者との調整会議、設計事務所との協議――建設現場では、様々な立場の関係者とのミーティングが日常的に発生する。問題はその後だ。打合せが終わった後、内容をまとめて議事録として関係者に共有するまでに、担当者は相当な時間を使っている。

日中の打合せの議事録を残業して作成するケースも珍しくなく、建設業界では議事録作成を含む事務作業が長時間労働の一因になっているとも指摘されている。
この記事では、AIを使って打合せ音声をテキスト化し、議事録のたたき台まで自動生成する具体的な手順を紹介する。特別なシステムは不要で、スマートフォンと無料〜低コストのツールで今日から始められる。
建設現場の議事録に求められること
建設現場の議事録は、一般的な会議録とは少し異なる役割を持っている。単なる話し合いの記録ではなく、「誰が・いつまでに・何をするか」というアクションアイテムを明確にし、関係者全員の共通認識をつくるための文書だ。
特に公共工事では発注者との協議記録として残す必要があり、内容の正確さと速やかな共有が求められる。一般的な議事録の記載項目は以下の通りだ。
- 日時・場所・出席者
- 協議事項(議題ごとの内容)
- 決定事項
- 担当者・期限を含むアクションアイテム
- 次回打合せの日程
全体の流れ:3ステップで議事録が完成する
AIを使った議事録作成は大きく3つのステップで完結する。
ステップ① 打合せを録音する スマートフォンの録音アプリで打合せ音声を録音するだけでいい。録音機材は不要だ。
ステップ② 音声をテキストに変換する 録音した音声ファイルをAI文字起こしツールに読み込ませ、テキストに変換する。
ステップ③ テキストをAIで議事録に整形する 変換されたテキストをChatGPTやClaudeに貼り付け、議事録のたたき台を生成させる。
全体の所要時間は打合せ時間を除くと15〜20分程度で、従来の半分以下に短縮できる。
ステップ①:録音ツールの選び方
iPhoneの場合 標準搭載の「ボイスメモ」アプリで十分だ。操作がシンプルで録音品質も高く、建設現場でのプロのインタビュアーの間でも広く使われている。録音した音声はm4a形式で保存され、次のステップのAI文字起こしツールにそのまま読み込ませられる。
Androidの場合 標準の「レコーダー」アプリを使えばよい。Google Pixel端末では日本語の文字起こし機能も一部搭載されている。
注意点 複数人が同時に話す打合せでは、全員の声が拾えるようスマートフォンをテーブルの中央に置くか、参加人数が多い場合は外付けマイクの利用も検討するとよい。
ステップ②:AI文字起こしツールで音声をテキスト化する
録音した音声ファイルをAIがテキストに変換してくれるツールを使う。主な選択肢を整理する。
Notta(ノッタ) 日本国内でもよく使われているAI文字起こしツール。無料プランは1回3分までの制限があり、業務での継続利用には有料プランが必要だ(年間契約で月額1,185円〜)。話者の識別機能やAI要約機能も備えており、議事録作成に適している。
Googleドキュメントの音声入力 Googleアカウントがあれば無料で使える。ただしリアルタイム入力専用のため、録音済みファイルを後から文字起こしするには向かない。
文字起こしさん 登録不要でブラウザから使えるWebサービス。1日10分(1ファイル3分)まで無料。打合せ音声のファイルをアップロードするだけでテキスト化でき、試しやすい。
業務での継続利用を考えると、Nottaの有料プランが使い勝手・精度ともにバランスがよい。まずは無料プランで試してから判断するのがおすすめだ。
ステップ③:テキストをAIで議事録に整形する
文字起こしで得られたテキストをChatGPTやClaudeに貼り付け、以下のプロンプトを使う。
コピペ用プロンプト(議事録生成):
以下は建設現場の打合せ音声を文字起こしたテキストです。
このテキストをもとに、議事録のたたき台を作成してください。
【打合せ基本情報】
日時:2026年○月○日(○曜日)○時〜○時
場所:○○現場事務所
出席者:発注者○○様、施工管理○○、設計○○
【文字起こしテキスト】
(ここに文字起こしのテキストを貼り付ける)
以下の形式で議事録を作成してください:
1. 協議事項(議題ごとに要点をまとめる)
2. 決定事項(箇条書き)
3. アクションアイテム(担当者・期限を明記)
4. 次回打合せ予定
文字起こしで聞き取れていない箇所や不明な点は「要確認」と記載してください。
文字起こしの段階でいくつか聞き取り誤りが含まれる場合もあるが、議事録の構造を整えることはAIが得意とする。出力されたたたき台を担当者が確認・修正するだけで、完成度の高い議事録が素早く仕上がる。
精度を上げる3つのコツ
録音環境を整える 騒音の多い屋外よりも室内、人数が多い場合はマイクに近い席に端末を置くと文字起こし精度が上がる。建設現場の専門用語は誤変換されやすいため、固有名詞や現場特有の用語は後から手修正する前提で進めると効率的だ。
文字起こし後に最低限の確認をする 全文を読み返す必要はない。「決定事項」と「担当者名」の部分だけざっと確認し、明らかな誤りがあれば修正してからAIに渡すと、より精度の高い議事録が得られる。
プロンプトに打合せの背景情報を加える 工事名・発注者名・打合せの目的などをプロンプトに加えておくと、AIが文脈を理解した上で議事録を整形してくれる。毎回のプロンプトに固定情報を入れておくテンプレートを作っておくとさらに効率的だ。
注意点:機密情報の取り扱い
打合せ内容には発注者情報や工事の詳細が含まれる。ChatGPTやClaudeなどの一般的なAIサービスに機密性の高い情報を貼り付ける際は、社内のセキュリティポリシーを事前に確認しておくことが重要だ。
機密情報が含まれる場合は、固有名詞や金額などの情報を伏せた状態でAIに渡すか、企業向けのセキュアなプランの利用を検討するとよい。
まとめ
打合せ音声の録音→AI文字起こし→AIによる議事録整形という3ステップで、従来は残業仕事だった議事録作成が大幅に短縮できる。初期投資はほぼゼロで、今日からでも始められる。
まずはスマートフォンのボイスメモで次の打合せを録音し、文字起こしツールを一度試してみることをおすすめする。
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