古民家再生が注目される今。築90年の家を蘇らせた実例から、空き家問題と地方再生の新しい関係を探ります。
築90年の実家がよみがえった——空き家・古民家リノベーションが切り開く未来
古い家には、時間が積み重なった空気があります。
柱に刻まれた幼少期の身長の跡、かつて祖父母が囲んだちゃぶ台。その思い出の空間が、誰も住まなくなった瞬間から「空き家」という社会課題へと変わっていく——これが、いまの日本の現実です。
筆者の大学時代の後輩は、築90年以上経つ実家を大胆にリノベーションしました。
彼が下した決断は「壊さずに、生かす」こと。
長年放置に近い状態から再び住める空間へと蘇らせたその家は、単なる一軒のリフォームではなく、「今を生きる地方再生の象徴」にも見えます。

日本の9軒に1軒が空き家という現実
総務省の住宅・土地統計(2025年時点)によれば、国内の空き家数は約900万戸に達し、すでに住宅総数の13%を超えました。
少子高齢化、都市への人口集中、相続の滞留などが重なり、放置空き家は年々増加しています。
一方で、その「負の資産」を再生によって価値へ転じる動きが、全国で加速しています。
古民家リノベーションは「懐かしさ」と「革新」の融合
古材の美しさ、太い梁、土壁の温もり。
こうした要素を残しながら、現代の快適性や省エネ性能を取り入れるリノベーションは、単なる住宅改修を超えた「文化の再生」です。
- 町家を宿泊施設へコンバージョンする事例
- 田舎の古民家を若者向けカフェとして再生するプロジェクト
地域の雇用、観光、コミュニティ形成につながる実践が各地で芽吹いています。
5つの視点から見る古民家ビジネスの可能性
シリーズでは、空き家・古民家リノベーションを以下の観点から掘り下げます。
- 社会課題解決としての再生
- 地方創生と観光振興
- リモートワークとライフスタイルの変革
- 文化・デザイン・ブランディング
- 政策・補助金による事業支援
実際に築90年の家を蘇らせた後輩のエピソードを軸に、「古きを生かす」という選択の価値を考えていきます。
結び
古民家は、単なる古い建物ではなく、日本の暮らし方そのものを映す文化資産です。
その再生を通して見えてくるのは、過去を活かしながら未来をつくるという新しい町づくりの姿。
次回から、その可能性を一つひとつ丁寧に紐解いていきます。
次回予告
▶次回は「社会課題をビジネスで解く──空き家再生がもたらす意義と広がり」へ
