第4回:環境啓発と全線カーボンニュートラル編 – 未来への架け橋
SDGsトレインの進化

阪急阪神ホールディングスグループの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の発足10周年を機に、2019年5月より運行を開始した「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」は、環境啓発活動における現場と技術の融合を象徴する取り組みだ。
技術的特徴
- 省エネ車を使用するとともに、走行にかかる電力をすべて(実質的に100%)再生可能エネルギーで賄い、環境に配慮
- 車体ラッピングでの環境メッセージ発信
- 車内での環境教育コンテンツ提供
現場職員の関わり
- 運転士・車掌による環境情報の発信
- 駅職員による乗客への環境啓発
- 車両整備士による省エネ運用の最適化
全線カーボンニュートラル運行の実現
2025年4月1日から阪急・阪神全線(約193km)の列車運行及び駅施設等で使用するすべての鉄道用電力を実質的に再生可能エネルギー由来の電力に置き換え、実質的にCO2排出量ゼロを実現。これは関西の鉄道会社では初の快挙である。
技術的基盤
- 関西電力とコーポレートPPAを締結し、新たに設ける太陽光発電設備で発電する電力を活用
- 既存の太陽光発電設備の拡充
- 再生可能エネルギー電力の戦略的調達
現場での実践
- 運転士による省エネ運転技術の徹底
- 駅職員による効率的な設備運用
- 保守部門における環境配慮の作業手順
ラッピング列車による啓発活動
カーボンニュートラル運行開始にあわせて特別なラッピング列車を運行:
デザインコンセプト
- “光・空気・木”を擬人化し、サステナブルな社会の広がりをウマカケバクミコ氏がデザイン
- 各車両のドア横にカーボンニュートラル運行をアピール
- 車内広告で環境保全への取り組みを紹介
PR動画の制作 声優・神谷浩史さんの声で全線カーボンニュートラル運行をPRする動画も制作。列車内のディスプレイや駅のデジタルサイネージで放映している。
現場職員の環境意識向上
教育・研修の充実
- 全職員への環境教育プログラム
- 現場での省エネ技術習得支援
- 環境取り組みの成果共有
現場からの提案制度
- 職員からの環境改善アイデア募集
- 現場知見を活かした技術開発
- 継続的改善活動(PDCAサイクル)
グループ全体への展開




車内全体に統一されたデザインで環境メッセージが配置され、実際の乗客が日常的に環境情報に触れる環境が整備されている。「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号をもっと知ろう!」という大型ポスターでは、東急と阪急の創業者達の出会いから約100年という歴史的背景も紹介し、単なる環境啓発を超えた企業の理念継承の場としても機能している。

線路に見立てて17のゴールを並べ、未来へのつながりを表現している。
車内にはSDGsの17の目標を示すステッカーも掲示され、「未来に、つながる。」というメッセージとともに、持続可能な社会実現への具体的な行動指針を乗客に示している。
未来への展望
2050年カーボンニュートラルに向けて ①省エネの着実な推進、②創エネ(再エネ発電設備等の導入)の検討、③再エネ電力の購入でカバーリングという3段階アプローチで長期目標を目指している。
現場と技術の更なる融合
- AIやIoT技術の活用による運用最適化
- 現場データの蓄積・分析による改善
- 次世代職員への技術・ノウハウ継承
連載総括 – 現場と技術の架け橋が創る価値
4回にわたって紹介した阪急阪神ホールディングスグループのエココト取り組みは、現場で働く職員一人ひとりの環境意識と最新の環境技術が見事に融合した成功例といえる。
現場と技術の架け橋が生み出す価値
- 実用的で持続可能な環境ソリューション
- 職員のスキル向上と環境意識の醸成
- 地域社会全体の環境負荷低減への貢献
- 次世代への環境技術・知識の継承
同グループの取り組みは、企業の環境活動において、現場の知恵と技術革新を融合させることの重要性を示すモデルケースとして、今後も注目され続けるだろう。
関西をリードする総合生活産業グループとして、阪急阪神ホールディングスグループの現場と技術の協働による環境取り組みは、持続可能な社会実現に向けた確かな道筋を示している。識向上から技術革新まで、阪急阪神グループの環境取り組みの集大成を紹介する。



