第3回:摂津市駅編 – 日本初カーボン・ニュートラル・ステーションの全貌
日本初の環境配慮型駅舎
2010年3月14日に開業した摂津市駅は、太陽光発電、LED照明、雨水利用などの省エネ施設の導入によるCO2排出量の削減とCO2排出枠購入により、駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにする日本初の「カーボン・ニュートラル・ステーション」として誕生した。
統合された環境技術
太陽光発電システム 駅舎屋根に設置された太陽光パネルが、駅運営に必要な電力の一部を賄う。現場の駅職員は日々の発電量をモニタリングし、効率的な電力活用を実践している。
雨水利用システム 屋根に降った雨水を貯留し、駅トイレの洗浄水や植栽の散水に活用。現場での水使用量削減と環境負荷低減を同時実現している。
LED照明の全面採用 駅構内のすべての照明をLEDに統一。従来照明と比較して大幅な消費電力削減を実現し、現場職員のメンテナンス負荷も軽減している。
現場運用での創意工夫
駅職員による省エネオペレーション
- 時間帯に応じた照明制御の最適化
- 空調システムの効率的運用
- 利用客の動線を考慮した設備稼働調整
環境啓発活動の拠点 通常、広告を掲出する看板について、そのすべてを環境をテーマにしたもので統一し、民間・行政が環境情報を発信。現場職員は利用客への環境情報提供も積極的に行っている。
CO2オフセットの仕組み
兵庫県の森林整備等のプロジェクトにより生み出された環境省オフセット・クレジット(J-VER)を利用することで、残存するCO2排出量を相殺。技術的削減と制度的仕組みを組み合わせた包括的アプローチを採用している。
記念列車による環境メッセージ
摂津市駅開業を記念して、摂津市駅の環境施策をPRするとともに、エコトレインに引き続き、環境メッセージを発信する列車として、京都線に「カーボン・ニュートラル・トレイン摂津市駅号」を運行。この列車でも兵庫県の森林保全による排出枠を活用し、列車運行に必要な電力のCO2をオフセットしている。
継続的改善と現場の学び
摂津市駅の運用を通じて得られた現場の知見は、その後のグループ全体の環境取り組みに活かされている:
- 設備の最適運用方法の体系化
- 利用客との環境コミュニケーション手法の確立
- 複数環境技術の統合運用ノウハウの蓄積
第4回予告
最終回では、「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」を中心とした環境啓発活動と、2025年に実現した全線カーボンニュートラル運行について詳しく解説する。現場職員の環境意識向上から技術革新まで、阪急阪神グループの環境取り組みの集大成を紹介する。
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