人口7,000人の町が、211億円を生み出すまで
北海道東部、釧路と帯広のあいだにある白糠町(しらぬかちょう)。
人口はわずか6,900人。
けれども2024年度、ふるさと納税の受入額で全国実質1位・211億円という数字を叩き出した。
観光都市でもなく、大企業の本社があるわけでもない。
「奇跡」と呼ばれるこの成果の裏には、地域が一体となって構築した“経済の設計図”がある。
一次産業をブランドに変えた「売る自治体」

白糠町は古くから漁業が盛んな町だ。
サーモン、いくら、たらこ、ホタテ——そのどれもが全国に誇れる品質を持つ。
しかし注目すべきは、その流通から販売までを行政が早期に自らの手で整えたことだ。
いわば「官製EC企業」として、町が自らブランディング・販売・物流を統合して運用。
レビュー分析までを行政が把握し、データをもとに改良を続けてきた。
民間任せにせず、“行政がマーケターになる”という発想の転換。
その挑戦が、地方自治の常識を変えた。
「ふるさと納税マニフェスト」が示す覚悟
2024年、白糠町は独自の「ふるさと納税マニフェスト」を発表した。
寄付金の使途を明確にし、地域内での再循環モデルを明文化したものである。
運営パートナーである株式会社イミューは、デジタル戦略・ブランド構築を支援。
寄付データの可視化、生産者ブランドの強化、SNS分析などを通して、
町全体を「一つの企業」として成長させていった。
町長・棚野孝夫氏はこう語る。
「制度が終わっても、地域が自立して回る仕組みをつくりたい。」
単なる“お金集め”ではなく、制度を越えて続く経済基盤づくり。
白糠町が見据えるのは、その先の未来だ。
寄付金を「未来資本」に変える仕組み
白糠町では、得られた寄付金を“消費”ではなく“投資”として再分配している。
教育・子育て・再生可能エネルギー・一次産業DXなど、
未来を支える分野に重点的に投入。
たとえば、小中一貫校「太陽の手学園」や、再エネ設備整備などがその象徴だ。
また町内企業支援条例により、ふるさと納税に関わらない事業者にも最大5,000万円の補助を実施。
「ふるさと納税に関わる人だけが得をする」構造ではなく、
町全体で成長する“共助経済”をデザインしている。
官民共創が導く“地方発イノベーション”
この白糠モデルから見えてくるのは、
「地域が企業のように戦略を持ち、企業が地域のように共感を重視する」という新しい構造だ。
企業にとっても学ぶ点は多い。
・データに基づくマーケティング
・ストーリーブランディング
・持続可能なサプライチェーン再構築
白糠町の成功は、単なる地域事例ではない。
都市企業にとっても、“人・地域・経済”のあり方を再設計するヒントとなる。
結び:地方から始まるサステナブル・エコノミー

白糠町のふるさと納税は、制度を活用する巧みさだけでは語れない。
その本質は「共に生きるためのデザイン」にある。
寄付する人も、つくる人も、届ける人も。
それぞれの想いがつながり、循環し、未来を育てていく。
地方創生とは、資金の話ではなく、関係性の話である。
白糠町の挑戦は、地域経済の未来に灯をともしている。
参照リンク
- 白糠町 ふるさと納税特設サイト
- 白糠町公式サイト(ふるさと納税制度案内)
- 白糠町公式note
- 白糠町「ふるさと納税マニフェスト」発表記事
- 白糠町ふるさと納税マニフェスト(PDF)
- 株式会社イミュー:白糠町との包括連携ニュース
- PR TIMES:白糠町とイミュー共同発表プレスリリース
- CommercePick:白糠町のふるさと納税マニフェスト報道記事
- 日経ビジネス:北海道白糠町 ふるさと納税特集
- note記事:資金運用表から見るふるさと納税効果(白糠町)
- 道の駅しらぬか恋問館:ふるさと納税案内
- ふるさとチョイス:北海道白糠町
- 楽天ふるさと納税:北海道白糠町
